法人成りの際、個人事業主として使っていた車やパソコンなどを法人に引き継ぐべきかどうかは、人によって判断が分かれます。
私自身も税理士さんにアドバイスをもらいながら、実態や使い方をふまえて、一部の資産を法人に売却し、名義も変更しました。
この記事では、あくまで「私の場合」をベースに、車・PC・スマホを法人に引き継いだときの流れや、想定外だったポイントをまとめます。
資産の引き継ぎは「実態」と「目的」で考える
資産の引き継ぎについて、税理士さんに聞いてみると、「実際に法人業務で使っているなら、個人名義のままでも経費にできるケースはある」というアドバイスをもらいました。
ただし、「実態だけでなく、形式面も整っていた方が、説明の理屈が通りやすい」とも言われました。
たとえば、車のように維持費が継続的にかかるものは、法人名義にしておくと経費としての扱いが明確になります。
私も、何をどう使うか・どう処理したいかを考えながら、引き継ぐかどうかを判断するようにしていました。
車|個人で購入し、法人に売却して名義変更
私が車を買ったのは、個人事業主として仕事を進めていくためでした。
我が家は共働きで、もともと家族で車1台を共同で利用していましたが、仕事で契約先や営業先に出向くことが増えていくにつれ、「家族で1台」は現実的に難しくなっていました。
夫はが通勤で使うことを考えると、私が仕事で移動するにはもう1台必要だと判断しての購入です。
法人成り後も当然、移動手段として車は必要だったため、税理士さんと相談のうえ、個人から法人に売却し、名義変更を行いました。
減価償却中だったので、残価で法人に引き継ぐかたちです。
税理士さんからは「業務用として継続して使うなら、法人名義の方が経費処理の理屈が通る」というアドバイスをもらいました。
生活圏にはスーパーや保育園、病院が徒歩で行ける範囲であり、私の車の利用用途は原則、「業務用」でした。
実態に合ったかたちで整理しておくと、あとあと管理がラクになります。
会社に車を売って名義変更だ!と思ったのですが、手続きを進める中で、陸運局の方から「会社の承認を示す議事録が必要です」と指摘され、株主総会議事録を急いで用意しました。
ひとり社長でも必要とのことで、売主としての私と、買主としての会社代表の私で、ちょっとした一人芝居のような株主総会を開くことになりました。
不思議な感覚でしたが、必要な手続きを踏むことができました。
車の名義変更にあたっては、思っていたよりも準備が多く、特に法人への売却という形をとった場合には、注意すべき点がいくつかありました。
このあとの項目で、実際にやってみて気づいたことを整理しています。
売買契約書|自作でもOK!形式より「内容の明確さ」
車の名義変更に必要な書類とは別に、税理士さんから「トラブルを防ぐためにも売却価格の根拠になる契約書が必要」と言われました。
私はネットで見つけたテンプレートに加えて、自治体が車を購入する際に使っている契約書の公開資料も参考にしながら自分で契約書を作成しました。
「いつ・誰が・いくらで・どんな資産を売却したか」がわかれば問題ないとのことだったので、内容はすこぶるシンプルなものです。
テンプレートは探せばいくらでも出てくるので、形式にこだわりすぎず、中身を明確にしておくことが大事だと感じました。
今のところ税務調査などで契約書を提示しないといけないということはありませんが、そうでなくとも契約書があることで「どの資産がどう移動したのか」を確認しやすくなります。
自分で作るのが不安な場合は、税理士などの専門家やディーラーに相談してみてもいいのではないでしょうか。
名義変更はディーラーに依頼|自分でやらない選択も
車の名義変更については、自分では手続きを行わず、車を購入したディーラーにお願いしました。
担当の方は夫の友人でもあり、普段から懇意にしていたこともあって、手数料はかからず、印紙代などの実費だけで対応してもらえました。
書類の準備や陸運局での手続きも、ディーラーに言われるがまま用意していたので、実際にどんな書類が必要だったか、私自身は細かく把握していません。
ただ、今回のように個人から会社へ売却するかたちで名義変更を行う場合は、株主総会議事録が必要になるという点は、一般的な売却・名義変更とは異なる部分です。
これが法人への売却として行う場合の、ひとつの注意点だと感じました。
細かい手続きに不安がある場合は、自分で抱え込まず、購入したディーラーに相談してみるのも選択肢のひとつだと思います。
パソコン|セキュリティ目的で業務専用を用意
パソコンは、起業のタイミングで新しく業務用として購入しました。
私の仕事は人事系の専門型コンサルなので、扱う情報の性質を考えると、プライベート用と業務用は完全に分けておきたいという考えがありました。
個人事業主時代、このパソコンは全額経費として計上しています。
仕事専用で使用していたため、按分は行わず、明確に業務用途とわかる状態で処理していました。
法人成り後は、減価償却の途中だったこのパソコンを法人に売却し、資産として引き継ぎました。
売却価格は残価をベースに設定しています。
法人での運用にあたって、こうした業務用の資産が法人名義になることで、処理や管理の線引きもより明確になりました。
スマホ|2回線運用で用途を分けて対応
スマホは、個人事業主だった頃から2回線を契約し、デュアルSIMで運用していました。
1本はプライベート用、もう1本は仕事用という使い分けです。
仕事用として使っていた端末は、個人事業主時代に購入し、経費として処理していました。
法人成り後は、減価償却の残価をもとに、法人に売却するかたちで引き継いでいます。
通信回線については、法人契約を検討したものの、1回線から契約できる会社が限られていたり、プラン内容も自分の使い方に合わないものが多かったため、個人契約を継続しています。
仕事用回線はもともとそれ用に契約した回線で用途は明確なので、事業用としてそのまま経費に計上しています。
もともとプライベート用と業務用で回線を分けていたため、按分などの調整をしなくても、扱いとしてはわかりやすかったです。
スマホは「端末」と「回線」で扱い方が分かれる資産なので、自分の使い方に合ったかたちで整理しておくと、経費処理もスムーズになると感じました。
まとめ
今回紹介したのは、私が法人成りの際に実際に行った資産の引き継ぎのやり方です。
車・パソコン・スマホなど、個人事業主として使っていたものを、法人に売却する形で引き継ぎました。
どれも仕事のために使っていたものですが、「使っていたからといって、自動的に法人に引き継がなければならない」という決まりがあるわけではありません。
実態に応じて、個人名義のまま法人の経費として計上する方法をとっている方も多いと聞きます。
私の場合は、どの資産も今後も業務で使い続ける前提があり、税理士さんと相談しながら「名義や処理も法人に移しておいた方が、後々の管理がしやすい」と判断しました。
名義変更や売買契約書の作成など、思ったより細かい手続きが多かったのも事実ですが、結果的には「やっておいてよかった」と感じています。
こうした資産の扱い方は、業種・事業規模・使い方などによって最適解が変わる部分です。
一つの“正解”があるわけではないので、周囲の事例だけで判断せず、自分の状況に合った整理の仕方を考えることが大切だと思います。
判断に迷ったときは、税理士などの専門家に相談しながら進めることで、納得感のある選択ができるはずです。
資産の整理や名義のことを考えるときに、この記事がひとつの参考になればうれしいです。