「取引先から法人化を勧められたけど、この売上で本当にやっていけるの?」
「節税できないなら、法人化する意味あるの?」
私が法人化したのは、**「BtoBなら信頼を得るためにも法人化したほうがいい」**というアドバイスを受けてのことでした。
でも、設立にも維持にもお金がかかるのはわかっていたからこそ、“法人も生活も維持できるのか?”という不安はずっとありました。
この記事では、その答えを“生活設計からの逆算”という視点でお伝えします。
私が法人化を選んだ理由
「法人化するなら、所得が800万円を超えてから」とよく言われます。
でも私は、そのラインに届いていない段階で法人化しました。
きっかけは、「BtoBなら法人にしたほうが信頼につながる」というアドバイス。
事業をスムーズに進めていくために、私自身もその通りだと感じて法人化に踏み切りました。
このセクションでは、そんな法人化の背景と、設立半期で見えてきたリアルをお伝えします。
税制メリットの享受ではなく、信頼獲得のための法人化
「法人化するのは、税制メリットを受けられるようになってから」
よく言われる目安は、所得が800万円を超えるあたりです。
これは、個人の所得税が累進課税で上がる一方、法人税は一定水準で頭打ちになるため、ある程度の所得があれば、法人の方が税負担が軽くなる構造になっているからです。
でも私は、そのラインにはまったく届いていない段階で法人化しました。
理由は、信頼を得るためです。
私の事業はBtoBが中心で、相手も法人が多く、営業の場面で「法人化の予定はありますか?」と聞かれることもありました。
また、同様にスモールビジネスを展開している経営者の方からも「法人化は信頼につながる」とアドバイスを受け、私自身もそれに納得して、法人化を選びました。
設立半年で見えてきた、“法人を回す”現実│設立半期のリアル
個人事業主として開業して約2年。
法人化から3Qが経過し、あと1Qで1年を迎えます。
いわゆる「税制メリットが出るライン」には届かない段階で法人化しましたが、
当初から気になっていたのは、「法人の維持費と自分の生活費の両方を、本当に無理なくまわせるのか?」ということでした。
実際に運営してみて感じたのは、
お金を動かすタイミングや、法人からの引き出し方を工夫すれば、法人と生活の両方を無理なく維持することは可能だということです。
帳簿と実際の生活とのズレをどう調整していくか。
その視点が持てるようになったのは、設立から数四半期を経た頃でした。
このあと、具体的なコストや維持の仕組みを項目ごとにお伝えしていきます。
法人の維持費はどれくらい?
法人化には、設立時にかかる初期費用だけでなく、運営を続けるうえで発生し続ける「維持費」もあります。
ここでは、私自身が法人化にあたって支払った費用を
①法人化で新たに発生したもの
②個人時代から継続しているもの
③法人設立時の初期費用
の3つに分けてお伝えしていきます。
法人化で新たに発生した費用│設立時にかかったリアルな支出
法人化にあたって、まず必要になるのが法人設立そのものにかかる費用です。
私は法人形態を株式会社にしました。
株式会社を設立するには、資本金が必要です。
登記関連の支出をまかない、個人事業主時代の経費や生活費もふまえて、残りでなんとか1ヶ月をまわせる程度の額をと考え、資本金は50万円に設定しました。
実際にかかった法人設立費用は以下のとおりです:
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登録免許税(株式会社):150,000円
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書類作成サービスの利用料(定款作成を含む)
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定款認証手数料(電子定款)
定款は紙で作成すると、別途4万円の印紙代が必要になります。私は電子定款で申請したため、この印紙代は不要でした。
初期費用を抑えるなら、電子定款はおすすめです。
【その他、法人設立にあわせて発生した支出】
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法人印鑑作成費用
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法人名義の名刺作成費用
これらは設立に必須なものではありませんが、
私は信用の面や業務での使いやすさを考え、法人化にあわせて用意しました。
特に名刺は、クライアントとのやり取りや営業活動にもすぐに必要となるため、法人名義で早めに作成しておいて正解だったと感じています。
個人事業主から継続利用しているサービス費用│法人成りしても変えなかったもの
法人化したからといって、これまで使っていたサービスをすべて新しくする必要はありません。
私自身、個人事業主の時から利用していたサービスの多くを、法人化した後も継続して利用しています。
使い慣れていて、コスト面でも見直す必要がなかったためです。
実際に継続している主なサービスは以下のとおりです。
【個人事業主の時から継続している主なサービス】
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ドメイン・レンタルサーバー(エックスサーバーで一括契約)
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バーチャルオフィス(個人事業主の時から継続)
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通信費(法人名義にはしていないが、用途を分けて運用)
携帯については、現在も個人名義で契約しています。
ただし、法人利用分として計上しているため、運用には少し工夫をしています。
法人契約は1回線のみだと契約できないケースも多いため、私は2回線を契約し、そのうち1回線を業務専用としています。
この番号は事業用として明確に用途を分けており、法人経費としても問題なく処理が可能です。
名義よりも用途が明確であることが経費計上の際には重要になりますので、ご参考までに。
生活費と法人維持のバランス│役員報酬と経費の考え方
法人を維持しながら、日々の生活も安定させる。
このバランスをどう取るかは、法人成りを検討するうえで多くの方が気になる点だと思います。
私は「事業として成立させる」だけでなく、会社員の頃と変わらず生活できるかどうかを軸に、法人の形を設計しました。
所得税を抑えるため、役員報酬は低く設定
役員報酬は、課税所得を非課税ライン内に抑えるように設定しています。
私の場合、年の途中まで会社員として給与所得があったため、その分をふまえて法人からの報酬は最低限にとどめています。
会社の期が変わるタイミングで見直す予定ですが、今しばらくは、所得控除内に収まるようにその範囲での設定を続けるつもりです。
非課税手当で実質の手取りを上乗せ
所得控除の範囲内に報酬を抑えているため、会社員時代と同じだけの収入を役員報酬だけで確保するのは現実的ではありません。
その不足分を補う手段として、旅費規程を活用しています。
旅費規程を設定したうえで、実務上必要な出張に対して手当を支給し、課税されない形で手取りを上乗せしています。これにより、課税されずに手取りを上乗せできます。
わざわざ役員報酬と分けて支給しているのはなぜ?と思われるかもしれませんが、実はこうした出張手当などは非課税所得として扱われます。
旅費規程を活用することで、税負担を抑えながら手取りを増やすことができるのです。
役員借入で「あと払い」にするという選択
移動や書籍の購入など、細々とした支出の多くは一度個人のお金で支払い、「役員借入金」として処理しています。
ちなみに、毎月の役員借入金については、毎月の自分のお小遣いで賄える程度です。
役員借入金として処理しているのは、私は金融機関からの借入がなく、資本金も抑えているので法人のキャッシュは少ないというのも理由です。
役員借入金として個人が先に支払う方法は、法人からの引き出しを売上が入金されたあとに回せるというメリットがあります。
特に法人化初期で売上が安定していない段階でも、「法人のお財布にお金がなくて動けない」となる事態を防げるのが利点です。
また、戦略的に赤字を積み上げておくことにもなるのでおすすめです。戦略的に赤字を積み上げておくことで、法人の利益調整にも役立ちます。
クレジットカードのポイント還元も意識しており、法人支出を個人カードで立て替えることで、実生活にもプラスが生まれています。
会社員時代から、個人事業主、そして法人成りした後も、生活水準が大きくかわることもなく、これまで通り生活できています。
売上を前面に出すのではなく、「生活費から逆算して法人の形をつくる」という考え方は、小さく始める法人には有効だと感じています。
生活設計から考える“ちょうどいい法人化”のススメ│売上〇〇万じゃなくても大丈夫
「法人化は売上がある程度見込める人のもの」
そんなイメージを持っていませんか?
実際、法人化をすすめる情報の多くは、「節税メリットを最大化するには年収800万円以上」といった話を前提にしています。
でも、全員がそのラインに到達してから法人化するわけではありません。
私自身は、個人事業主としてある程度の収入が安定した段階で法人成りをしました。
大きな売上や節税が目的ではなく、対外的な信頼を得るために“信用を買った”という感覚が近いです。
とはいえ、個人事業主に比べて法人は維持にかかる費用が多くなります。
そのため、法人化後は生活の安定を損なわないように逆算して設計してきました。
会社を大きくしたい、というよりも、「生活を崩さずに、法人という形で事業を続けていく」そんな法人化の形もあると思うのです。
法人化してからも工夫次第で手取りを確保し、法人も生活も維持していくことは可能です。
「契約先から法人化の打診をされているけど、売上があまりないから法人化できない」と悩んでいる方でも、生活設計をベースにした法人運営なら、無理なくやっていけるはずです。
まとめ
「売上がまだ少ないから法人化は無理」
「節税になるほど稼げていない」
そう考えて、法人化をためらっている方も多いかもしれません。
ですが、法人化の理由は節税だけではありません。
私自身は、信頼性を得るために法人化を選びました。
もちろん、法人には維持費がかかります。
だからこそ、生活に支障が出ないよう、法人運営をどう設計するかを意識してきました。
たとえば、所得控除におさまる役員報酬の設定、旅費規程を活用した非課税手当の支給、一時的に発生する支出は役員借入金として処理し、あとで調整するなど。
こうした工夫を重ねることで、法人も生活も、どちらも崩さずに維持できていると感じています。
法人としての信頼獲得を目的に法人化を検討しているけれど、売上や節税の観点から不安を感じているという場合でも、生活設計から逆算しての法人運営であれば十分可能です。
法人化の先が不安に思う方の参考になれば幸いです。