起業したけどまだ収入がない」
「そもそも出す必要があるの?」
「e-TAXでもできる?」
起業を進めると、必ず出てくるのが「開業届」と「青色申告」。
事前にどんな手続きなのかを知っておけば、スムーズなスタートと、無理のない節税につながります。
この記事では、e-Taxで開業届を出す方法と、提出することで得られるメリットを、体験を交えて解説します。
開業届│事業をするなら出すべき理由
事業を始めるにあたり、必ず耳にするのが「開業届」です。
これは、税務署に対して「事業を始めました」と届け出るための書類です。
実際には、開業届を出さなくても仕事を始めることはできます。
しかし、その場合は税務上「事業」として認識されず、収入は雑所得として扱われ、税制上の優遇も受けられません。
継続して仕事をしていくつもりがあるなら、たとえ事業収入がなくても、開業届は早めに出しておくのをおすすめします。
青色申告による特別控除などを活用するうえでも、提出の有無は重要になります。
ここからは、開業届を出すとどう扱われるのか、収入との関係や手続きの流れを、私の体験ご紹介しながらお伝えします。
開業届を出す意味|開業届を出すと変わる自分の「立場」
実は「開業」に法律上はっきりとした定義があるわけではありません。
一般的には、収益を得ることを目的として事業を開始したタイミングが「開業」とされます。
開業届を提出することで、税務署はその人を「個人事業主」として把握します。
この届出があることで、個人事業主としての所得は事業を行った上で発生した所得としての扱かわれ、帳簿の作成や確定申告の対象になります。
一方、開業届を出さずに仕事を始めた場合、その収入は「雑所得」として申告することになります。
雑所得は経費として認められる範囲が狭く、税制上の不利が生じることもあります。
私の場合も、事業としてきちんと取り組む意思があったため、ホームページのが公開できるようになった時点で開業届を提出しました。
ホームページの作成は起業を決めてから一番最初に取り組んだだため、この時点で事業所得があるどころかマイナスです。
ただ、開業届を提出したことで、「これから事業をやっていくんだ」とあらまて気持ちを引き締めるきっかけにもなりました。
事業の「立場」の明確化がカギ│届の基準が収入の有無でない理由
実は、開業届の提出は、「収入があるかどうか」ではなく、「事業に継続性があるか」がカギです。
継続的に事業を行う意思があり、準備や活動を始めているなら、たとえ収入がゼロでも提出が必要になります。
私も実際に、まだ1円の収入もない段階で開業届を出しました。
ホームページを立ち上げ、名刺を作り、「仕事として始める準備が整った」=「継続して事業を行う意思を固めた」と考え、そのタイミングで開業届を出しました。
実は開業届を出さずに事業を始めることはできるのですが、雑所得になりたとえば青色申告の特別控除など、税制優遇が受けられないということを起業準備のための情報収集のなかで知りました。それもあって早い段階から開業届を出しています。
開業届を出すことで、税務上は「事業所得」として扱われるようになります。
雑所得とは異なり、必要経費を幅広く計上できるなどの違いもあります。
「それなりに稼げるようになってから」と思うかもしれません。
しかし、事業として継続的に取り組むつもりなら、収入の有無にかかわらず開業届を出すことをおすすめします。
青色申告?白色申告?│私が選んだのは
開業届を出す際には、「白色申告」と「青色申告」のいずれかを選ぶことになります。
これは、所得の申告方法や税制上の優遇措置に関わる重要な選択です。
どちらを選んでも事業を始めることはできますが、両者には控除額や帳簿づけのルールなど、制度的な違いがあります。
私は当初、「帳簿付けが簡単だから」という理由で白色申告を選ぼうと思っていました。
ただ、私の事業を考えると帳簿付けは複雑ではなく、税制メリットを考えると青色申告にするのが良い、と商工会の相談員である姉に言われ、青色申告を選択しました。
実際に白色申告をしたことはないので比較ができないのですが、帳簿付けもなんとかなっているし、なんといっても控除の恩恵を受けられる点に魅力を感じたからです。
開業届とあわせて青色申告も提出し、事業を始めました。
青色申告で事業を始めて感じたことや、気づいた点について、次で紹介します。
青色申告を選んだ理由|控除額と帳簿の手間
「青色申告がおすすめ」と言われて調べてみると、控除額はなんと最大65万円でした。
スモールスタートで顧客の獲得のこれからという状況では、その恩恵は大きいと感じました。
もちろん、簿記の知識は一切ないこともあり、帳簿づけが必要になる点は気になりました。
でも、実際に私の事業では複雑な仕訳にはならず、別記事で紹介しているExcel帳簿を使っての管理でも大きな手間などはなく、思っていたよりも簡単にできました。
「白色のほうが簡単」とよく言われますが、「帳簿付けが必要」というのは一緒で、姉の言葉を借りれば「少し帳簿付けが細かくなっただけで控除額が跳ね上がる」のです。
白色申告にしても結局帳簿付けがいると知った私は、それなら控除が大きい青色の方が納得できる、と思ったのも理由の一つです。
私自身、今は法人化して帳簿の付け方は変わりましたが、帳簿付けは自分で行ってきました。
慣れてしまえば、自分のお金の流れも把握しやすくなり、青色申告にして良かったと感じています。
白色申告≠簡単│実はどちらも帳簿付けは必須
「白色申告は簡単」と漠然と思っていたこともあり、最初は白色申告にしようと考えていました。
でも調べてみると、今は白色申告でも帳簿の作成は必要で、思っていたより簡単ではなさそうだと思えたのです。
困った時は詳しい人に、と思い、商工会の相談員である姉に相談したところ、
「青色でも、帳簿が少し細かくなるだけ。控除額は跳ね上がるから手間に見合うよ」と言われました。
実際に青色で帳簿をつけてみると、原料などがなく仕入れもない私の事業では、帳簿付けに慣れていない私でも、なんとかなっています。
実は会計ソフトを使わず、書籍の付録でダウンロードしたExcel帳簿を利用していましたが十分対応できています。
白色と青色の違いは「帳簿がある・ない」ではなく、「どれだけ細かくつけるか」ということろが大きな差。
だったら、控除が受けられる青色を選んだ方が納得感があると思っています。
青色申告は申請必須|開業届と一緒なら出し忘れなし
開業届を提出するだけでは青色申告をするかどうあは税務署にはわかりません。青色申告を行う場合は、開業届とは別に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
この書類を提出しないと、たとえ帳簿をつけていても青色申告としては扱われません。
開業届と必ずしも同時に出さなくても構いませんが、新しく事業を始める場合、青色申告承認申請書の提出期限は「開業日から2か月以内」とされています。
すでに開業届を提出している場合は、その「提出日」ではなく、あくまで「開業日」からのカウントになるため注意が必要です。
2か月あるならよく考えてから、と思うかもしれませんが、開業初期はバタバタしていることも多いので開業届と併せて提出するのがおすすめです。
私も、書類提出の手間が一度になると思い、開業届と併せて提出しました。
内容は難しいものではなく、迷う項目もほとんどありませんでした。
一緒に出しておけば提出忘れもなく、スケジュールを気にしなくて済みます。
その後の申告もスムーズに進んだので、「開業届と同時に出す」のがおすすめです。
よくある疑問と注意点
開業届について調べていると、「収入がなくても出せる?」「扶養は外れる?」など、提出のタイミングや税制との関連など、疑問が次々と出てきます。
私自身、開業届を出す前は芋づる式に疑問が湧き、制度の説明を見ても、結局「自分の場合はどうなの?」と迷ってしまうこともありました。
ここでは、実際に私が悩んだポイントや、よく検索されている疑問を中心に、気をつけておきたい点をまとめました。
体験を交えてお伝えしますので、これから開業届を出す方の参考になればと思います。
開業届はいつ出す?│提出タイミングに関する疑問
開業届の提出期限は、事業を開始した日から1ヶ月以内です。
「事前に出しておく」ことはできず、開業日=事業を始めた日以降でなければ受け付けてもらえません。
「じゃあ、開業日っていつになるの?」と迷う人も多いと思います。
明確に開業の定義が法で定められているわけではないので難しいのですが、
私の場合はホームページを公開し、名刺を作成し、外部に向けて「事業を始めます」と言える準備が整えたうえで、なんとなく縁起が良い日を選んで「開業日」として届け出ました。
その時点で収入はゼロどころかマイナスです。
どんな事業でも、商品やサービスを買ってもらうには必ず何かしらの費用がかかり、原価や広告にかかる費用がこれにあたります。
私の場合、ホームページは対外的に自分のサービスを知ってもらうためのツールであり、広告の役割があるため、レンタルサーバー代などはれっきとした「事業に必要な経費」です。
開業届を出す前に経費がかかっていますが、事業を始めるための準備の費用なので、開業費として計上が可能です。
どこまで遡って計上できるのか、どんなものが計上できるのかは、税理士などの専門家にご確認ください。
また、「何月に開業届を出すのがお得か?」という疑問もよく聞きます。
たしかに、青色申告の場合は1月〜12月が申告期間なので、1月開業だと1年分の収支を計上できます。
ただ、実際には「この月のほうがお得」という明確な答えがあるわけではなく、前述のように開業準備に必要なお金は経費として計上が可能です。
会計帳簿管理の手間を考えると、売上が近い将来見込めそうになり次第開業届を提出し、そこまでの事業にかかるお金は開業費としてもいいかもしれません。
どこまで決めておく?│提出するまでに最低限確認したいこと
開業届を提出する際、「どこまでしっかり決めておけばいいの?」と悩む人も多いと思います。
たとえば「屋号」。私は本当にこれでいいのだろうかと考えこんでしまい、後から追加しようと考えていました。
実際、屋号は開業届に書かなくても提出できますし、後から変更・追加することも可能です。
ただ私は、屋号付きの銀行口座を開設したかったため、提出時には屋号を決めて記載しました。
住所についても気になる点でした。
なんとなく、開業届に自宅の住所を書くのに抵抗があったのですが、よく確認すると「納税地」として扱われるものでした。
開業届で使用する住所は、税務署に「自分はここで事業を行っています」と申告するもので、税金の納付先を示す意味合いもあります。
一方で、ホームページに記載する住所は、対外的な信用やプライバシーへの配慮を目的としており、私はバーチャルオフィスの住所を利用しています。
このように、開業届には「記載する必要があるけれど、後から変更もできる」項目もあります。
提出の際に悩むかもしれませんが、絶対に最初から完璧に決めておく必要はありません。
e-Taxで開業届!自宅で提出するための準備
私は開業届をe-Taxでオンライン提出しました。
税務署に行かずに自宅で手続きできるのはとても便利でしたが、いくつか準備が必要です。
まず、e-Taxで提出するには**「マイナンバーカード方式」または「ID・パスワード方式」**のいずれかを選ぶ必要があります。
マイナンバーカードを持っている場合は、
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ICカードリーダー
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または マイナンバーカード対応のスマートフォン
があれば、電子署名を付与してオンライン提出が可能です。
私はICカードリーダーを使いました。自宅で0歳児のお昼寝中を見計らって出したのを覚えています。
また、マイナンバーカードは確定申告にも使えるため、長い目で見ても取得しておくと便利だと感じました。
一方で、マイナンバーカードを持っていない場合でもe-Taxで申請は可能ですが、
その場合は事前に税務署で本人確認を受け、「利用者識別番号(ID)」とパスワードを発行してもらう必要があります。
e-Taxは自宅から提出できるのが大きな利点なのに、そのために税務署に出向くのでは手間が増えるだけです。
そのため、ICカードリーダーまたは対応スマホを用意して、マイナンバーカード方式を利用するのがおすすめです。
開業=扶養から外れる?「扶養内」の注意点
開業届を出すと、家族の扶養から外れるのでは?と不安に思う方も多いかもしれません。
実際、私も開業後、個人事業主一本に絞っていた時期に夫の扶養に入ろうとしたのですが、扶養には入れませんでした。
その理由は、夫の加入していた健康保険組合の基準によるものでした。
同じ「扶養」といっても、税法上の扶養と健康保険の扶養では判断基準がまったく異なります。
特に健康保険では、個人事業主や法人代表となると扶養の対象外とされる場合があるのです。
夫が加入していた健保では、開業届を出したことで「事業を行っている」と見なされ、事業に必要な広告費などの支出は経費として認められず、売上のほとんどがそのまま収入とみなされ、結果として「基準以上の収入がある」と判断されました。
このような判断基準は健保ごとに異なるそうで、独立している後輩は夫の扶養に入れた、と言っていました。
「はじめのうちはそんなに収入も見込めないし」と、パートナーの扶養に入るつもりでいると、私のように「扶養に入れない」ケースもあるので、事前に加入予定の健康保険組合へ確認しておくことがとても大切です。
これは予想外の落とし穴で、法人化するまでは国保に加入することになり、保険料の出費は結構高めでした。
これから開業届を出す方には、制度の違いも意識しておくことをおすすめします。
まとめ
事業を始めると決めたら、早めに整理しておきたいのが「開業届」や「青色申告」の手続きです。
私自身も、必要だとは思いつつ、「どのタイミングで出すべきか」と迷いながら進めていました。
実際に提出してみて感じたのは、手続きに加えて、周辺の制度や条件に迷いやすいということ。
収入がなくても出すべきか、屋号は決めておくべきか、扶養には入れるのか……など、一つひとつは小さな疑問でも、後回しにするとかえって複雑に感じてしまいます。
私は青色申告を選んだため、開業届と青色申告承認申請書をまとめて提出しました。
e-Taxを使えば自宅からの手続きも可能で、思っていたよりもスムーズに進められます。
制度を知ったうえで一歩踏み出してみると、必要以上に構えなくても進められることも多いと実感しています。
「出しておけばよかった」と後から気づかないためにも、早めの準備をおすすめします。